NISTEP注目科学技術 - 2020_E953
概要
天然物化学と生態学および、インフォーマティクスや数理モデリングをはじめとする数理科学の融合による、植物間コミュニケーションを可視化する技術が今後注目に値する科学技術であろうと思える。逆に、ここで出遅れると諸外国に植物生産に重要な天然物同定および人工的合成技術について特許、知財を奪われる可能性がある。 植物が水溶性化合物および、揮発性化合物を介してコミュニケーションをとり、周囲の生物的環境に対して応答することが近年次々に明らかにされてきた。植物はただ静的に物理環境に応答するだけでなく、生物環境に対しても応答し、時に共生相手に協力し、時に騙す。このような振る舞いは単に基礎生物学上興味深いだけでなくさまざまな応用先が考えられる。植物の根の肥大化、もしくはその抑制のシグナルとなりうる、化合物の同定(混合物の場合その組成)が明らかになれば現代農業のあり方が変化する。植物工場でも一層の生産性向上が期待できる。また植物が菌類を騙して資源を搾取する行動が明らかにされてきたが、このことは裏を返すと、菌類の騙し方が理解されれば生きた植物としか関係性を築かない、マツタケやホンシメジのような有用品種の栽培化に大きな期待がもてる事を意味する。食物資源の安定化、品質の向上はこれまで植物および共生生物との格闘の歴史であり、除草剤や化学肥料など無機的化合物を介した機械的制御が行われてきたが、将来の持続可能性を考えた際に、天然物化学による植物の制御法の確立は大きな期待が寄せられる。
キーワード
2020年調査にはこの項目はありません。
ID | 2020_E953 |
---|---|
調査回 | 2020 |
注目/兆し |
2020 ※2020年調査にはこの項目はありません。区別のため、便宜上 「2020」 としています。 |
所属機関 | 大学 |
専門分野 | ライフサイエンス |
専門度 | - 2020年調査にはこの項目はありません。 |
実現時期 | 10年未満 |
分析データ 推定科研費審査区分(中区分) | 38 (農芸化学) |
分析データ クラスタ | 44 (植物・微生物) |
研究段階
2020年調査にはこの項目はありません。
インパクト
2020年調査にはこの項目はありません。
必要な要素
天然化合物の同定および網羅的記載、機能の解析には、ハイスループットな分析技術の確立、およびインフォマティクスと機械学習の融合による選定作業が必要となる。これと同時に、植物と、菌類をはじめとする共生生物の飼育法の確立や網羅的フィールドサンプリング法の確立にはブレイクスルーが必要である。これまでの野外調査は専門の調査員(分類学者や生態学者)が地道にサンプリングを行ってきたが、機械学習等の予測技術を通してエキスパートに変わるシステムを開発し、トップの専門家でなくとも、サンプリングを行い、ハイスループットな分析にかけるまでのパイプラインが構築できれば、この分野の技術開発が一気に進む。国内には森林をはじめとする野外生態系の網羅的観測システムおよび分析までのパイプラインが存在しないので、システム構築と分析装置、ソフトコンピューティングのすべてのインフラを整え、諸外国に先んじいて天然物の網羅的記載をすすめることが求められる。