NISTEP注目科学技術 - 2020_E944

概要
新型コロナ感染症の原因ウイルスの検出で最も高感度かつ高精度とされている手法は、核酸(RNA/DNA)レベルでの検出であるが、現状のPCR法やLAMP法においては偽陰性(感度)や偽陽性(精度)の課題が残されている。また、今後の新興感染症への社会インフラの整備の観点からは、検出に掛かる経費(コスト)や設備、時間についても、改善すべき点が多い。核酸(RNA/DNA)増幅酵素を反応が最適な状態となるよう精確に配向(配置)し、偽陽性の原因となる非特異的な副反応を抑えつつ、特異的な増幅反応効率を最大限にする「分子レベルでの反応場の最適化技術の確立」により、1分子からの正確な検出(超早期の発見)を可能とする。意外にも、その可能性を示唆する萌芽的な技術開発が進行中であり、多孔質の無機材料の一つで、ある条件を満たすメソポーラスシリカ材にPCR法で用いられているDNA増幅酵素を固定化することにより、分子レベルでの飛躍的な反応効率の向上が示唆され、既存のPCR法の約10,000倍の感度と、1分子レベルの微量DNA分子からの正確な増幅の可能性が認められつつある。また、これと同時に、増幅反応に必要な酵素量の微量化、反応時間の短縮(PCR反応における伸長反応時間の短縮とサイクル数の低減化)の効果が認められると共に、PCR法だけでなくLAMP法にも応用可能なことが示唆され、これらは検出に掛かる経費削減や簡便化、時間短縮への可能性が示唆される。
キーワード
2020年調査にはこの項目はありません。
ID 2020_E944
調査回 2020
注目/兆し 2020
※2020年調査にはこの項目はありません。区別のため、便宜上 「2020」 としています。
所属機関 公的機関
専門分野 ライフサイエンス
専門度 -
2020年調査にはこの項目はありません。
実現時期 10年未満
分析データ 推定科研費審査区分(中区分) 90 (人間医工学)
分析データ クラスタ 6 (分子生物学/診断・治療)
研究段階
2020年調査にはこの項目はありません。
インパクト
2020年調査にはこの項目はありません。
必要な要素
現在、材料科学(物性科学)と酵素科学(分子生物学)の間で、学際領域研究としての技術開発が進められ、これまでの研究では、メソポーラスシリカ表面と酵素分子間には、静電的な相互作用の他、疎水的な相互作用の影響も大きいことが示唆されつつあるが、メソポーラスシリカ材の種類(特性)と酵素分子種の組み合わせにより、反応効率の向上が認められる場合と、そうでない場合など、未だ経験的な試行錯誤の域を脱しているとは言い難い。「分子レベルでの反応場の最適化技術の確立」に向けては、分子レベルでの反応シミュレーション技術や、AI技術などのデータサイエンスを活用した「反応場の分子設計」も必要であり、そうした研究分野との融合がブレイクスルーとして期待される。