NISTEP注目科学技術 - 2020_E943

概要
手前味噌で申し訳ありませんが、当グループで開発中の遺伝子合成技術です。この方法は、これまでの合成生物学の最大のボトルネックである遺伝子合成時間を飛躍的に短縮する可能性が期待される。従来のPCRを基盤とする合成法は、わずか数百bpでも増幅できない配列や、長鎖に挿入されるエラー頻度、エラーの修正にかかる時間などの問題があり、これらが、DNA合成に要する時間を長くし、DBTL(design-build-test-learn)サイクルの機動性を制限していました。我々の方法は、リガーゼを基盤とするオリゴヌクレオチド伸長法であり、従来の問題点を解決しました。また、PCRで増幅できない配列(スリッページをおこして、部分領域が削除される配列)の合成も成功しています。
昨年10月5日号のNature BiotechnologyのNews(Nat Biotechnol. 38, 1113–1115, 2020 )によると、現時点で、遺伝子合成の問題は長いオリゴヌクレオチド合成により解決できると考えられており、2013年から注目されてきたTerminal Deoxynucleotidyl Transferase (TdT)による合成法が現在300-mer程度まで可能となったと、期待感を高めており、一方、多くの企業がTdT法をテストしているが、いくつかの顕著なバイアスがあることが指摘されはじめていることにも言及しています。
一方、我々は、昨年よりオリゴヌクレオチドをリガーゼで伸長する方法を検討しており、このたび、60-mer の合成オリゴ5本から300 bpの合成を達成し、その合成時間は1日かかりません。更に、合成した300bpの1本鎖DNAを4本繋いで、1.2kbpの合成にも成功しました。
アメリカでは、昨年7月、この分野に5000 万ドルの投資が行われるほどの注目産業であると書かれていました。よって、この方法は、停滞していた合成生物学の進展を促すだけでなく、ゲノム情報の「rewrite」により、スマートセル等の開発に貢献し、日本が世界の合成生物学を牽引する技術になり得るかもしれないと考えています。
キーワード
2020年調査にはこの項目はありません。
ID 2020_E943
調査回 2020
注目/兆し 2020
※2020年調査にはこの項目はありません。区別のため、便宜上 「2020」 としています。
所属機関 大学
専門分野 環境
専門度 -
2020年調査にはこの項目はありません。
実現時期 10年未満
分析データ 推定科研費審査区分(中区分) 37 (生体分子化学)
分析データ クラスタ 6 (分子生物学/診断・治療)
研究段階
2020年調査にはこの項目はありません。
インパクト
2020年調査にはこの項目はありません。
必要な要素
現在、適当に合成したい配列を60-merずつに分けて、オリゴDNAをオーダーいていますが、シールするオリゴのTm値の計算や、長鎖の1本鎖DNAの立体構造予測など、長鎖になればなるほど、未だ直面していない問題があると考えており、計算科学のサポートが必須と思います。