NISTEP注目科学技術 - 2020_E883

概要
DNAナノテクノロジー等を基盤とする分子ロボティクス、分子サイバネティクスに注目しています。分子レベルの部品を精密に組み立てるだけでなく、それらを統合してシステムと機能させることを目標としています。細胞のように振る舞う人工物を一からボトムアップで作ろう、という野心的な科学技術分野であり、科研費でも2012-2017年度の新学術領域「分子ロボティクス」や、2020年に発足した学術変革領域(A)「分子サイバネティクス」などのプロジェクトが走っています。2016年にノーベル賞を受賞した分子機械の分野をさらに発展させようという試みであり、例えばDNAのような分子をネジのような材料として使うナノテクノロジーと言えます。将来的には、投薬制御や生体内計測、遺伝子診断、ケミカルAIなどへの応用が期待されています。コロナウィルスのワクチンとして期待されているRNAやDNAなどの核酸医薬などとも相性が良いです。
キーワード
2020年調査にはこの項目はありません。
ID 2020_E883
調査回 2020
注目/兆し 2020
※2020年調査にはこの項目はありません。区別のため、便宜上 「2020」 としています。
所属機関 大学
専門分野 ナノテクノロジー・材料
専門度 -
2020年調査にはこの項目はありません。
実現時期 10年以降
分析データ 推定科研費審査区分(中区分) 28 (ナノマイクロ科学)
分析データ クラスタ 6 (分子生物学/診断・治療)
研究段階
2020年調査にはこの項目はありません。
インパクト
2020年調査にはこの項目はありません。
必要な要素
ゲノム合成プロジェクトにより、オリゴプールを代表とするDNA分子を超大量に合成する技術が普及しつつあります。さらにロボットによる実験の自動化などにより、システムの再現性、頑健性、スケーラビリティが向上してきています。しかしながら、これらの製品や設備は海外のメーカーにより発表されているものが多く、最新の情報を入手するのに遅れが生じます。また、価格も高いため、日本の一研究者が気軽に参画できる状況にはありません。今後は、産総研が開発したロボット実験設備「まほろ」などをフルに活用し、研究活動の自動化を推し進め、スケールを超えることを目指す研究を支援するべきです。自動化するのは実験にとどまらず、AIを活用して、論文執筆や、投稿、査読プロセスなどもどんどん加速する枠組みを構築することを目指すことを勧めます。

また、論文の発表にあたって、研究者は現在出版社から不当な扱いを受けていると強く主張したいです。不誠実な料金体系により、金銭的にも搾取を受けており、多くの研究費が税金により賄われていることや、ほとんどの出版社は海外に本拠地があることを考えると、即急な対策が必要であると言えます。例えば論文を投稿して出版するのには、カラーチャージをはじめとする料金をとられ、さらに誰もが無料で論文を読めるようにするためのオープンアクセスにするには、論文一本あたり10万円から50万円の追加料金がかかります。さらにオープンアクセスでない論文を読むために、日本の大学などは総額で年間数100億円以上にも上る購読料を出版社に支払っています。また、論文の査読には多大な労力が必要にもかかわらず、出版社に依頼された場合、研究者はボランティアで査読を行います。さらに査読自体は業績として認められることはまれです。出版社により金銭的・労力的に研究者が搾取されている構造上の問題があり、回りまわって研究への支障が出ていると言えます。一研究者や大学レベルでは、権利の乱用を行っている出版社の経済活動を是正を行えないため、ぜひ対策に乗り出してもらいたいです。