NISTEP注目科学技術 - 2020_E882
概要
DNAシーケンシング技術や遺伝子改変技術の目覚ましい進歩により、多様な機能を有した人工微生物を自在に創出することが可能になりつつあり、化学品やエネルギー生産に利用されている。一方、自然界においては単一微生物が単独で存在することはなく、多種多様な微生物が相互作用しながら細菌叢を形成し、単一の微生物では成し得ない高次の機能を有することがある。例えばメタン発酵技術は、複合基質からなる有機廃棄物からメタンガスを産生する技術であり、廃棄物処理技術として重要である。また、腸内細菌叢は宿主の健康に対して、重要な働きをする。しかしながら、これらの菌叢を構成する微生物の種類を自在に変化させたり、菌叢中の特定微生物の遺伝子を改変する技術が不在であるため、微生物菌叢を人為的かつ自在に制御する技術は不在である。そこで、このような目的を達成しうるメタゲノム編集技術が今後重要な科学技術となると予測される。菌叢微生物が有するゲノムの集まり=メタゲノムを一つの巨大ゲノムと見据え、これらの特定領域を切断したり、書き換えたりすることが可能となれば、特定の微生物を死滅させたり、特定の微生物の遺伝子のみを書き換えることが可能となり、微生物菌叢の人為的制御が可能となるであろう。
キーワード
2020年調査にはこの項目はありません。
ID | 2020_E882 |
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調査回 | 2020 |
注目/兆し |
2020 ※2020年調査にはこの項目はありません。区別のため、便宜上 「2020」 としています。 |
所属機関 | 大学 |
専門分野 | ライフサイエンス |
専門度 | - 2020年調査にはこの項目はありません。 |
実現時期 | 10年以降 |
分析データ 推定科研費審査区分(中区分) | 38 (農芸化学) |
分析データ クラスタ | 31 (環境化学) |
研究段階
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インパクト
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必要な要素
メタゲノム編集技術の実現には菌叢中の特定微生物のみの遺伝子を編集する技術の開発が必要である。現在の試みとしては、高宿主域の接合伝達プラスミド(あるいはプラスミド群)を有する供与菌を菌叢と混合し、多様な微生物にプラスミドを伝搬させる手法などが開発されている。プラスミド中に特定微生物の特定遺伝子を標的するsgRNAとゲノム編集酵素を挿入することで、特定微生物のみの遺伝子を改変できると期待されている。類似した手法として、ファージを利用して、ゲノム編集酵素遺伝子を挿入した遺伝子を菌叢微生物へと導入する手法も検討されている。しかしながら、いずれの技術も多様な微生物に高効率に遺伝子を導入することは困難である。従って、多様な微生物に高効率にゲノム編集酵素を導入できる技術が開発されれば、ゲノム編集酵素の高い特異性を持って、目的微生物の遺伝子のみを改変することが可能になるであろう。