NISTEP注目科学技術 - 2023_E217

概要
ペプチドとタンパク質を構成するアミノ酸と化学修飾されたアミノ酸の配列を直接決定するペプチドシークエンサーは、新たな科学の開拓とともに、革新的な診断法と薬を生み出すと期待される。
キーワード
ペプチドシークエンサー / プロテインシークエンサー / 翻訳後修飾 / エピトープ直接解析 / 1分子解析
ID 2023_E217
調査回 2023
注目/兆し 注目
所属機関 大学
専門分野 ナノテクノロジー・材料
専門度
実現時期 5年以降10年未満
分析データ 推定科研費審査区分(中区分) 43 (分子レベルから細胞レベルの生物学)
分析データ クラスタ 5 (分子生物学/薬理学)
研究段階
世界中で、様々な手法を用いて、原理実証が行われている段階。一部の技術は、アミノ酸を1分子レベルで識別ができている。エピトープの直接解読が可能になると、一気にブレイクすると想定される。
インパクト
DNA、RNA、ペプチド・タンパク質における化学修飾が、発現や細胞の分化を制御していることが明らかになりつつあり、最終生成物のペプチド・タンパク質のアミノ酸配列や翻訳後修飾の解明は、DNA-RNA-ペプチド・タンパク質のつながりが1対1の関係を常には満たさない発見になる可能性がある。実際に、世界の膨大な全ゲノム解析は、何一つ薬を創出しておらず、ゲノムだけでは決まらない要因が存在する。その可能性が実証された瞬間が、ゲノム一辺倒で進出できた生物学・医科学・薬学を激変する特異点になる。その特異点を起点にして、新たな学術と同時に、特に、診断法と薬の開発が飛躍的に進むと期待される。
必要な要素
これまでのゲノム研究を支えているDNAシークエンサーの開発は、AIの導入により、激変した。高品質な計測1次データを大量に生産し、保持することが科学技術の進展に不可欠となっている。このため、高品質な計測1次データを生み出す計測ハードウエアの開発を迅速に行うことが研究開発競争において重要になる。一方で、高品質な計測1次データをオープンデータベースに登録することは、宝を道端に捨てるのと同じことになるため、データのオープン・クローズの線引きが重要になる。