NISTEP注目科学技術 - 2020_E699

概要
医学・生命科学分野では一細胞マルチオミクス解析技術が注目されている。多細胞生物の機能は、多様な機能を有する細胞が相互作用することで実現される。各細胞の機能的多様性はDNA、mRNA、タンパク質、代謝物といった多階層の分子ネットワークにより実現される。一細胞マルチオミクス解析は、一細胞のクロマチン構造、mRNA発現、タンパク質発現・修飾、代謝物を網羅的かつ多数の細胞で同時に解析し、複数のデータを関連づける解析である。一細胞のmRNA発現を調べるトランスクリプトーム解析(single cell RNA sequencing)、一細胞のクロマチン構造を調べるエピゲノム解析(single cell ATAC sequencing)はすでに実現し、既存の知識によらずに細胞種を分類・解析する画期的な技術として注目されている。従来はこれらの解析を別々に実施していたが、近年両者を同じ細胞で実現する手法も開発された(PMID 33098772)。この技術により、細胞の機能変化に伴うクロマチン構造とmRNA発現の経時的変化の関係を精度よく推定することも可能になった。一細胞レベルのタンパク質や代謝物の網羅的解析が実現すれば、一細胞でDNA、mRNA、タンパク質、代謝物の全階層にわたる分子ネットワークを可視化することが可能になる。
キーワード
2020年調査にはこの項目はありません。
ID 2020_E699
調査回 2020
注目/兆し 2020
※2020年調査にはこの項目はありません。区別のため、便宜上 「2020」 としています。
所属機関 大学
専門分野 ライフサイエンス
専門度 -
2020年調査にはこの項目はありません。
実現時期 10年未満
分析データ 推定科研費審査区分(中区分) 43 (分子レベルから細胞レベルの生物学)
分析データ クラスタ 41 (発生・分化・幹細胞)
研究段階
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インパクト
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必要な要素
一細胞レベルのタンパク質や代謝物の網羅的解析は発展途上である。核酸でラベルした抗体をsingle cell sequencing解析で検出するCellular Indexing of Transcriptomes and Epitopes by Sequencing (CITE-seq)の導入で、一細胞レベルのタンパク質の解析をsingle cell RNA sequencingやsingle cell ATAC sequencingと組み合わせることはすでに可能である。抗体などの種類を増やしてタンパク質検出の網羅性を高めることは理論的には不可能ではない。産官学が連携して一細胞解析に使用できる抗体やタンパク質検出法の種類を増やす地道な取り組みが必要である。一方、一細胞レベルの代謝物の網羅的解析は実現には遠い。既存の方法の検出感度では一細胞の代謝物を検出するのが難しいことが主な理由であり、代謝物の検出技術の感度上昇が求められている。