NISTEP注目科学技術 - 2020_E684

概要
 タンパク質の構造変化が原因で発症するプロテイノパチーは、アルツハイマー病、パーキンソン病、プリオン病などの神経性のものに加え、リウマチ、糖尿病、ALSなど全身性のものも多く知られている。これまでに、プロテイノパチー発症に関わる様々なタンパク質が明らかにされてきたが、それらが生体内でどのように構造変化(変性)し、病気の発症に関与しているのか不明な点が多かった。近年、様々な蛍光プローブが開発され、プロテイノパチーの原因となる変性タンパク質の凝集や沈着を生体環境下でイメージングすることが可能となり、生体内における変性や凝集・沈着メカニズムの解明、それを生体内で抑制する物質の探索なども可能となりつつある。
 高齢化社会の進行に伴う認知症の増加をはじめとして、タンパク質変性を要因とするプロテイノパチーは世界的な平均寿命の延伸に伴って大きな社会問題となりつつある。例えば、認知症だけでも世界の社会的コストは2018年に1兆ドル程度であり、2030年には2兆ドルを超えると試算されている。
 バイオイメージング技術を活用したプロテイノパチーの解明、およびその予防、治療法の開発は有用であり、一分子バイオイメージング先進国である我が国が世界に先駆けて喫緊に取り組むべき課題である。
キーワード
2020年調査にはこの項目はありません。
ID 2020_E684
調査回 2020
注目/兆し 2020
※2020年調査にはこの項目はありません。区別のため、便宜上 「2020」 としています。
所属機関 大学
専門分野 ライフサイエンス
専門度 -
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実現時期 10年未満
分析データ 推定科研費審査区分(中区分) 52 (内科学一般)
分析データ クラスタ 53 (臨床医療/内科一般)
研究段階
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インパクト
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必要な要素
 様々なプローブを用いたタンパク質の蛍光イメージングは既に様々な分野で確立されている。これをプロテイノパチーに応用するためには、いかに生体環境下に近い条件を構築できるかにかかっている。近年の、相分離生物学の概念によれば、変性タンパク質の凝集や沈着は周辺の環境に大きく影響を受ける。すなわち、様々なタンパク質、脂質、塩などが高濃度で存在する中での変性や凝集の経時的な解析が必要になる。これらの、多種多様ないわゆる混ざり物が存在する中での変性、凝集、沈着やその抑制などを正確に解析する技術の開発、すなわち生体内環境の再現とその条件下での精度の高いイメージング技術の開発がまず最初のブレークスルーとして必要である。次に、生体内の深層部位でのin vivoイメージング技術の開発が進めば、生体内での様々な検証も進展するであろう。