NISTEP注目科学技術 - 2020_E667
概要
新興感染症の原因ウイルス等の出現や細胞の癌化を含め、ゲノム情報の変異として生物の進化の理解が進みつつあるが、ノイズ・レベルの一過的な変異の出現(後に集団としては淘汰される結果に終わる)と、環境への適応を通じてゲノム上に固定化され、結果的に進化の一つとして選択されるものとの、体系的な理解の研究は試行錯誤の段階にある。現在、入手可能なゲノム情報は、生命を記述する唯一のデジタル情報であり、全ての生物が有する固有の本質的な情報、例えば、個人(個体)の識別(双子であっても免疫系などの後天的な獲得因子により)も可能な情報である。このゲノム情報の特性は、これまで生物学的な機能解析(遺伝子など)による分類や理解が主体であった。それは、ヒトでは30億塩基という膨大なゲノム情報を遺伝子単位で比較解析するのが現実的であったからに他ならないが、スーパーコンピューターやAIに代表される情報解析の進展により、ゲノム情報をデジタル情報そのものとして比較解析することが可能となってきた。実際には、日本の人口1億人の全てのゲノム情報(30億塩基 x 1億人)を一度に比較解析を行うことは、未だに非現実的ではあるが、近い将来に必要とされる個別ゲノム医療には必須となる課題である。現時点で可能なレベルとしては、ウイルスを含む微生物など、ヒトに比べゲノム情報が格段に少ない生物でのゲノム情報のスーパーコンピューターとAIを活用した比較解析に留まっているが、それでも進化における新奇のゲノムデザインの法則性が発見され、その検証が進められている。こうしたデータ駆動型サイエンスによる生命の理解に関わる科学技術が注目に値すると思われる。
キーワード
2020年調査にはこの項目はありません。
ID | 2020_E667 |
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調査回 | 2020 |
注目/兆し |
2020 ※2020年調査にはこの項目はありません。区別のため、便宜上 「2020」 としています。 |
所属機関 | 公的機関 |
専門分野 | ライフサイエンス |
専門度 | - 2020年調査にはこの項目はありません。 |
実現時期 | 10年以降 |
分析データ 推定科研費審査区分(中区分) | 43 (分子レベルから細胞レベルの生物学) |
分析データ クラスタ | 51 (生物生態・多様性) |
研究段階
2020年調査にはこの項目はありません。
インパクト
2020年調査にはこの項目はありません。
必要な要素
現在のスーパーコンピューターとAIを活用しても、実際に解析可能なゲノム情報はヒトに比べゲノム情報が格段に少ない生物種に限定せざるを得ないのが実情である。そのブレイクスルーには、既存のコンピューター理論とは異なる量子コンピューティングの理論の活用が必要になるように思われる。現時点での量子コンピューティングは、現在のスーパーコンピューターやAIとの比較は困難であるが、両分野の研究者が協力して将来的な課題解決を模索していくべき研究分野であると考えられる。