NISTEP注目科学技術 - 2020_E566

概要
リチウムおよびレアメタル回収技術
(理由)
リチウムイオン電池は、スマートフォン、タブレットやノートパソコンに使われるにとどまらず、急速に進む自動車の電動化におけるエネルギー貯蔵媒体として、需要が急拡大している。経済産業省を中心に進められる運搬や移動用の大型ドローンの導入も高性能なリチウムイオン電池の使用が前提である。風力発電や太陽光発電を全発電量の2割以上に増やすと、エネルギー需給バランスの瞬時制御が極めて困難となる。大規模停電を発生させぬようにエネルギーの需給制御を行うには、大容量蓄電池を備えたスマートグリッドシステムの確立が必要であり、そのためにも大容量リチウムイオン電池は重要なカギである。また、世界の革新的リチウムイオン電池研究をリードする日本では、リチウムイオン電池市場の奪還は産業基盤安定化への責務である。このように需要が急増するチウムイオン電池を安価に供給するには、高純度なリチウムとレアメタルの安価で安定な供給が必須である。
リチウムは、以前は南米の塩湖かん水からの供給が大半を占めていたが、現在はオーストラリアの鉱山からの供給が過半を占めている。塩湖かん水からのリチウム資源回収が、1~2年の長い工程を要し、また採取地の深刻な環境破壊が問題となっており、急増するリチウム資源需要に合わせた増産が困難なためである。オーストラリアの鉱山から供給されるリチウムは、複雑な不純物除去工程を要して高コストであり、リチウム資源価格は2015年から2018年の3年で3倍に急騰した。また、鉱山の殆どが中国資本の数社による寡占状態であり、エネルギー安全保障上の懸念がある。リチウムイオン電池が、主要なエネルギー源としての重要度を増すことを考慮すれば、当該懸念は深刻である。
レアメタルも産出量が少なく、抽出が難しい希少金属である。2019年度の世界の資源産出量の63%が中国と、気和得て偏在性が高く、安価・安定な供給の継続に課題がある。市場が小さいことから価格変動も顕著であり、日本の経済において重要な懸念因子である。

キーワード
2020年調査にはこの項目はありません。
ID 2020_E566
調査回 2020
注目/兆し 2020
※2020年調査にはこの項目はありません。区別のため、便宜上 「2020」 としています。
所属機関 大学
専門分野 エネルギー
専門度 -
2020年調査にはこの項目はありません。
実現時期 10年以降
分析データ 推定科研費審査区分(中区分) 64 (環境保全対策)
分析データ クラスタ 31 (環境化学)
研究段階
2020年調査にはこの項目はありません。
インパクト
2020年調査にはこの項目はありません。
必要な要素
〇リチウム資源に関して 
使用済みリチウムイオン電池内の資源は再利用されておらず、コバルトなどの遷移金属とともにリチウムの回収・再利用が期待されている。また、南米の塩湖が地面の隆起により孤立した海水の乾燥で生じたことから自明なように、海水には無尽蔵のリチウムが存在する。濃度は約0.17ppmと高く、経済的回収可能範囲である。日本国内には高濃度リチウムを含有する地下水(温泉)が多数存在し、その含有率は海水比で数桁高いものもある。使用済みリチウムイオン電池、海水、および地下水からの高純度リチウムの経済的回収を可能にする技術の創成は、安定なリチウム供給を可能にする。
例えば、リチウムイオン伝導性固体セラミックスを電解質とする電気透析は、原理的に100%の高純度リチウムの回収を可能にし、回収液の前処理や回収されたリチウムを精製する後工程も不要である。ブレイクスルーが必要な課題は、エネルギー効率を含む工程全体の経済性の向上と、システムの大型化による増産が技術の開発である。