NISTEP注目科学技術 - 2023_E186

概要
ダイヤモンドパワーデバイスの実用化。ここ数年で、ダイヤモンドパワーデバイスの技術的な進歩が佐賀大を中心に報告されている。またダイヤモンド基板のビジネスも企業が参入しつつあり、全体的に活性化しているように思われる。
キーワード
ダイヤモンド / パワー半導体 / パワーデバイス / 次世代半導体
ID 2023_E186
調査回 2023
注目/兆し 注目
所属機関 公的機関
専門分野 ナノテクノロジー・材料
専門度
実現時期 5年以降10年未満
分析データ 推定科研費審査区分(中区分) 21 (電気電子工学)
分析データ クラスタ 27 (理化学/半導体・ナノ・材料)
研究段階
現状は佐賀大学が企業(オーブレイ)と共同研究を進めているほか、早稲田大学からパワーデバイスベンチャー、産総研や金沢大学から基板ビジネスのベンチャーが発足している。既にダイヤモンドデバイスそのものではなく、基板などの周辺ビジネスが立ち上がっている段階である。
デバイス化に関しては実用レベルと見られる水準のものが2023年に佐賀大から報告されており、今後の展開次第では一気にビジネスとして成立する可能性もある。
インパクト
既存の真空管が使われている宇宙関係の高周波通信などの既存デバイスの置き換えが進むほか、究極の半導体と呼ばれるダイヤモンドの実用化という学術的なインパクトは大きい。パワー半導体候補の超ワイドバンドギャップ材料がいくつか存在するが、一気にダイヤモンドへの研究が集中するという構図になる可能性も秘めている。
またダイヤモンドは放射線にも強く、放熱特性も優れることから、極限環境のデバイスとして科学技術関連に広く使用される見込みがある。さらにダイヤモンドそのものの加工技術など、付随する関連技術の研究開発も加速され、デバイス作製工程の変革が起き得る可能性がある。
必要な要素
ダイヤモンドを加工する技術や、金属との接点、その他実装など様々なデバイス工程に耐えうる技術開発が必須となる。全体的に現状のシリコン技術が転用できないものであるため、全てダイヤモンド用の製造工程を確立する必要が出てくる。したがって単純に半導体デバイスの学術的な進展だけではなく、素子作製のためのエンジニアリングが極めて重要であり、その周辺に投資できるかどうかで日本がビジネス展開できるかどうかが決まると思われる。