NISTEP注目科学技術 - 2020_E457
概要
固体中のマヨラナ準粒子の検出と局所的な操作に基づく、量子計算素子の実現が可能になるかもしれない。マヨラナ準粒子とは、トポロジカル超伝導体と呼ばれる一群の超伝導体や、量子スピン液体と呼ばれる磁性体において生じる、エネルギーの高い「渦」の構造に付随する粒子のことである。このマヨラナ準粒子の特筆すべき特徴は、一つの量子状態の半分に相当する、ということである。すなわち、一つの量子状態を二つのマヨラナ準粒子に分割し、空間的に離れた場所に置くことにより、量子状態を非局所的に、外部からの擾乱によって壊れにくい形で保存することが可能となる。このマヨラナ準粒子を搭載した渦は量子的なビットを構成し、また渦同士は、二つのマヨラナ準粒子が一つの量子状態を構成することを反映して、お互いに一種の遠隔相互作用を及ぼし合うことになる。その結果として、互いの渦の位置を交換することにより、量子ビットの情報を操作することができる。最近の大きな進展の一つは鉄カルゴゲナイド超伝導体において、トンネル走査顕微鏡(STM)による、マヨラナ準粒子の観測が報告されたことである。量子スピン液体の候補物質においても、STMによるマヨラナ準粒子探索の研究が進んでいる。またSTMを用いたマヨラナ準粒子の操作の試みについても、理論のレベルではあるが種々の提案がなされており、マヨラナ準粒子の検出、操作の技術が確立すれば、量子計算素子としての実現が最低限の段階で実現可能となる。
キーワード
2020年調査にはこの項目はありません。
ID | 2020_E457 |
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調査回 | 2020 |
注目/兆し |
2020 ※2020年調査にはこの項目はありません。区別のため、便宜上 「2020」 としています。 |
所属機関 | 大学 |
専門分野 | ナノテクノロジー・材料 |
専門度 | - 2020年調査にはこの項目はありません。 |
実現時期 | 10年未満 |
分析データ 推定科研費審査区分(中区分) | 13 (物性物理学) |
分析データ クラスタ | 48 (スピントロニクス) |
研究段階
2020年調査にはこの項目はありません。
インパクト
2020年調査にはこの項目はありません。
必要な要素
超伝導体においては、マヨラナ準粒子のものと思われる共鳴ピークがSTMにより観測されたが、それがマヨラナ準粒子由来のものであり、他の量子状態を起源とするもので無いことを確認する必要がある。量子スピン液体については、マヨラナ準粒子の観測そのものが大きな課題である。また、マヨラナ準粒子の操作についてはまだ理論提案の段階に留まっており、現実化には多くの課題が残っている。例えばSTM探針のような局所的なプローブとマヨラナ準粒子との相互作用の性質を明らかにし、マヨラナ準粒子を実験的に操作するための現実的なプロトコルを構築する必要がある。また、固体中で外部環境との相互作用する中、量子情報を保ったままマヨラナ準粒子を操作する制御の原理と方法論を構築する必要がある。