NISTEP注目科学技術 - 2020_E438
概要
非エルミート光学を用いた高感度センシング技術(Nature 548, 187 (2017), Nature 576, 65 (2019), Nature 576, 70 (2019))
結合共振器系に増幅利得、吸収損失を分布させたり、結合の一方向性を導入したものは、光エネルギーを必ずしも保存しない応答を示すため、非エルミート光学系(場合によっては、PT対称光学)と呼ばれる。このような系では、上記の効果の強さに応じ例外点(Exceptional point: EP)と呼ばれる固有モードの縮退が起こり、その近傍で起こる様々な新奇現象が報告されている(Nature Photonics 11, 752 (2017))。
近年特に注目されているのが、例外点のセンサ応用である。例外点縮退の周りでは、固有モード周波数はパラメータ変化に対し累乗根型の依存性を持つ。そのため、系は個々の共振器周波数のわずかな変化(摂動)に対し大きな固有周波数変化を示す(Nature 548, 187 (2017))。最近、この特性がリングレーザのサニャック効果の増強に応用できることが示された(Nature 576, 65 (2019), Nature 576, 70 (2019))。この結果は、光学式ジャイロスコープの特定の動作点での感度を、例外点を用いることで10倍以上に向上できることを示す。この技術により、従来のリングレーザジャイロが比較的苦手としていた低加速度帯での測定能力の改善が期待される。
結合共振器系に増幅利得、吸収損失を分布させたり、結合の一方向性を導入したものは、光エネルギーを必ずしも保存しない応答を示すため、非エルミート光学系(場合によっては、PT対称光学)と呼ばれる。このような系では、上記の効果の強さに応じ例外点(Exceptional point: EP)と呼ばれる固有モードの縮退が起こり、その近傍で起こる様々な新奇現象が報告されている(Nature Photonics 11, 752 (2017))。
近年特に注目されているのが、例外点のセンサ応用である。例外点縮退の周りでは、固有モード周波数はパラメータ変化に対し累乗根型の依存性を持つ。そのため、系は個々の共振器周波数のわずかな変化(摂動)に対し大きな固有周波数変化を示す(Nature 548, 187 (2017))。最近、この特性がリングレーザのサニャック効果の増強に応用できることが示された(Nature 576, 65 (2019), Nature 576, 70 (2019))。この結果は、光学式ジャイロスコープの特定の動作点での感度を、例外点を用いることで10倍以上に向上できることを示す。この技術により、従来のリングレーザジャイロが比較的苦手としていた低加速度帯での測定能力の改善が期待される。
キーワード
2020年調査にはこの項目はありません。
ID | 2020_E438 |
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調査回 | 2020 |
注目/兆し |
2020 ※2020年調査にはこの項目はありません。区別のため、便宜上 「2020」 としています。 |
所属機関 | 企業 |
専門分野 | ナノテクノロジー・材料 |
専門度 | - 2020年調査にはこの項目はありません。 |
実現時期 | 10年未満 |
分析データ 推定科研費審査区分(中区分) | 21 (電気電子工学) |
分析データ クラスタ | 37 (電磁波・光学・レーザー・光半導体) |
研究段階
2020年調査にはこの項目はありません。
インパクト
2020年調査にはこの項目はありません。
必要な要素
例外点を持つリングレーザジャイロにおいて、信号である周波数変化を増強できる加速度の範囲は狭いため、動作点を精密に移動させる共振器の制御技術が必要である。また、この場合の例外点の実現には光アイソレータ(非相反光学素子)の導入が必要である。ただし、自由空間や光ファイバに基づく比較的大きなリングレーザジャイロに例外点を導入する技術障壁は高くないと考えられ、10年未満の間に航行制御等に向けた応用技術が実現する可能性がある。一方で、オンチップ光回路の共振器系の中に光アイソレータを組み込むことは困難であるため、情報処理端末等への応用には当該技術の実現が必要である。