NISTEP注目科学技術 - 2023_E18

概要
無線LANやセルラ通信など、無線通信用途に使用していた電波(または通信の制御用の信号の電波)を利用して、センシングを行う電波センシングが注目されている。電波は周囲の物体により反射、回折して複数の経路で送信機から受信機まで到達するが、この複数経路で受信した信号の振幅・位相の特徴から周囲環境をセンシングする研究がおこなわれている。
従来から人物の位置推定など単純なセンシングが可能なことは知られていたが、機械学習の発展により、人体の姿勢推定や画像復元まで可能になりつつある。
機械学習を用いて、学習環境と同一環境において、高精度なセンシングを行う方式と、機械学習を用いず環境をモデル化することで、センシング対象の変化を検知する方式があるが、いずれも環境変化した際のセンシング性能低下が課題となっている。
キーワード
電波センシング / 無線センシング / Joint Communication and Sensing / WiFi Sensing
ID 2023_E18
調査回 2023
注目/兆し 注目
所属機関 大学
専門分野 情報通信
専門度
実現時期 5年未満
分析データ 推定科研費審査区分(中区分) 60 (情報科学、情報工学)
分析データ クラスタ 38 (計算機・電気通信・通信デバイス・量子計算機)
研究段階
大学や民間研究所の実験において、人物の姿勢推定、行動推定、生体情報モニタリングなどが可能なことが実証されている。
また、いくつかのスタートアップ企業が製品をリリースしているものの、適用範囲の狭さから普及していない。
多くの研究では無線LANの電波を利用するものが多いが、次世代のセルラ通信規格である6Gの利用用途に含める提案も見受けれられる。
インパクト
センシング専用の機器を開発し、設置するのではなく、すでに普及している無線LANアクセスポイントや携帯基地局およびスマート端末を利用してセンシングが可能になるため、安価かつ広範囲でセンシングが可能になる。
また、プライバシ保護の観点から可視光カメラが設置できない場所でのセンシングが期待されている。
必要な要素
多様な環境へ適用可能なモデル構築もしくは、環境変化に対して自動的に適応する仕組みが課題となっている。

また、回答者の個人的な意見として、カメラと比較した電波センシングの利点として、プライバシを必要以上に漏洩しないことが挙げられる一方で、技術革新によりセンシング可能な事柄が増え、精度が上がることで、プライバシが損なわれていくことの議論が不足していると感じている。