NISTEP注目科学技術 - 2020_E351

概要
宇宙からの地震先行現象観測研究:
 マグニチュード7以上の地震は全球で年平均16回、6以上は約130回発生するため、地上定点観測に比べ短期間に多数のイベント観測が可能となり、これが各国で衛星や宇宙ステーションからの観測が計画・実施される大きな理由となっている。
 2017年の大規模地震対策特別措置法の見直しまで、我が国で予知可能な地震は東海地震のみとされており、気象庁が24時間体制で歪計監視を行ってきた。その根拠は1944年東南海地震直前の隆起とされているが、仮にこの地震が100年毎に発生すると仮定すれば、100回のイベントデータを取得するには1万年もの年月が必要となる。宇宙からの地震先行現象観測ではそれが圧倒的に短縮可能となる。
 2004年6月29日、フランスはロシアのDneprロケットによりバイコヌール宇宙基地から地震電磁気観測衛星:DEMETERを打上げた。DEMETERはマグニチュード4.8以上の地震9000回の解析結果として、地震前4時間以内にVLF帯の夜間電波強度が低下することを報告した。次に行うべき観測は、本現象の独立した検証と、地方時依存性の調査であろう。
 宇宙開発の進展著しい中国は、2003年から国家863計画(中国ハイテク研究)の一環として、中国地震局が地震電磁衛星の研究を開始し、国防科工局と共同で首都圈地震電離層試験網を2009年に設置、国家航天局とイタリア宇宙機関との協力により、世界最古の地震計を発明した張衡の名前を冠した地震電磁観測衛星初号機:ZhangHeng-1を、2018年2月2日に酒泉宇宙センターから打上げ、2021年以降追加し5~6機の衛星群を構築する予定である。(参考 http://www.leos.ac.cn/ http://cses.roma2.infn.it/ )
キーワード
2020年調査にはこの項目はありません。
ID 2020_E351
調査回 2020
注目/兆し 2020
※2020年調査にはこの項目はありません。区別のため、便宜上 「2020」 としています。
所属機関 公的機関
専門分野 宇宙・海洋・科学基盤
専門度 -
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実現時期 10年未満
分析データ 推定科研費審査区分(中区分) 17 (地球惑星科学)
分析データ クラスタ 62 (地震・プレート・地層・マントル)
研究段階
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インパクト
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必要な要素
 地震前大気圏・電離圏変動メカニズムの解明には多分野に渡る学際的研究が必要不可欠であり、そのためには地上観測と連携した地圏-大気圏-電離圏の時空間変動を包括的に観測する衛星群による観測が論理的帰結となる。
 宇宙基本法の成立から我が国の宇宙政策は安全保障及び産業振興を重点化し、地球科学・宇宙科学の将来計画の空白が続く今、小型・超小型衛星による地球科学・宇宙科学ミッションは、基礎研究・基盤研究を維持する唯一の現実的方策である。
 基礎研究・基盤研究は科学・技術の基盤であり、これなくして産業振興はもちろん、イノベーションはおろか国防すらも危ういものとなろう。(既にその兆候は現れつつある)

参考資料:
【論説】宇宙基本計画 利用大国への道は険しい(茨城新聞, 2020.7.15)
http://3coco.org/a/modules/d3pipes_2/index.php?page=clipping&clipping_id=99018
新世紀地震フロンティア研究:地上-衛星連携による地震先行現象の確立(児玉, 2018)
https://jglobal.jst.go.jp/detail?JGLOBAL_ID=201802282931064357
地震短期予測の可能性と防災(上田, 2013)
https://bosailab.jp/library/uyeda/uyeda_report_20130126.pdf