NISTEP注目科学技術 - 2020_E320
概要
ラマン散乱分光による生体組織・細胞のイメージング.
生体内の分子の動態を調べるために,蛍光を利用する蛍光顕微鏡は大きく進歩を遂げてきた.タンパク質にコードされた蛍光分子(GFPなど,2008年ノーベル化学賞)が発見されたため,遺伝子工学的手法で任意のタンパク質に蛍光タグを結合できるようになったことも大きな理由で,蛍光タンパク質と蛍光顕微鏡は互いが互いを高め合う形で発展してきたといえる(超解像蛍光顕微鏡は2014年ノーベル化学賞).現在は,蛍光分子を利用すれば,生体内で1分子の挙動を追えるところまで研究が発展しつつある.
上述のように,タンパク質の動態の理解が急速に進んでいるが,"タンパク質以外"についての動態は*進みが遅れている*.具体的には,糖や脂質などの化合物の動態を観察する技術が足りないためである.脂質の動態を追いたい場合,脂質に結合するタンパク質に蛍光タグをつけて,蛍光顕微鏡で観察するのが一般的な方法である.脂質そのものをダイレクトに時間分解能よく調べるのは現在の技術では困難である.
そんななか注目されるのはラマン顕微鏡である.ラマン散乱分光を利用した顕微鏡で,物質固有のπ共役電子から,非染色・非破壊に物質を検出でき,最近は生体分子のin situでの観察手段として大きな注目を集めている.
生体内の分子の動態を調べるために,蛍光を利用する蛍光顕微鏡は大きく進歩を遂げてきた.タンパク質にコードされた蛍光分子(GFPなど,2008年ノーベル化学賞)が発見されたため,遺伝子工学的手法で任意のタンパク質に蛍光タグを結合できるようになったことも大きな理由で,蛍光タンパク質と蛍光顕微鏡は互いが互いを高め合う形で発展してきたといえる(超解像蛍光顕微鏡は2014年ノーベル化学賞).現在は,蛍光分子を利用すれば,生体内で1分子の挙動を追えるところまで研究が発展しつつある.
上述のように,タンパク質の動態の理解が急速に進んでいるが,"タンパク質以外"についての動態は*進みが遅れている*.具体的には,糖や脂質などの化合物の動態を観察する技術が足りないためである.脂質の動態を追いたい場合,脂質に結合するタンパク質に蛍光タグをつけて,蛍光顕微鏡で観察するのが一般的な方法である.脂質そのものをダイレクトに時間分解能よく調べるのは現在の技術では困難である.
そんななか注目されるのはラマン顕微鏡である.ラマン散乱分光を利用した顕微鏡で,物質固有のπ共役電子から,非染色・非破壊に物質を検出でき,最近は生体分子のin situでの観察手段として大きな注目を集めている.
キーワード
2020年調査にはこの項目はありません。
ID | 2020_E320 |
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調査回 | 2020 |
注目/兆し |
2020 ※2020年調査にはこの項目はありません。区別のため、便宜上 「2020」 としています。 |
所属機関 | 公的機関 |
専門分野 | ライフサイエンス |
専門度 | - 2020年調査にはこの項目はありません。 |
実現時期 | 10年未満 |
分析データ 推定科研費審査区分(中区分) | 43 (分子レベルから細胞レベルの生物学) |
分析データ クラスタ | 6 (分子生物学/診断・治療) |
研究段階
2020年調査にはこの項目はありません。
インパクト
2020年調査にはこの項目はありません。
必要な要素
一番重要なのは,ラマン散乱分光顕微鏡の感度である.蛍光分子はnMの分子が細胞内に存在すれば十分すぎるほどの検出が可能であるが,ラマン散乱分光顕微鏡の場合は,uM程度の濃度でしかみることができない.例えば植物のアルカロイド系の二次代謝産物の合成過程を調べたかった場合,微量にしか存在しないために検出ができない.ラマン散乱分光の感度を上昇させるためには,ラマン散乱を増強するためのプローブが用いられるが,研究開発が十分とは言えない.また,プローブを利用すると,外部から操作を加えることになるため,プローブに頼らずに,その感度を上げる方法も必須である.
次に,顕微鏡の普及である.生物学者にとってはラマン分光はまだまだなじみの薄い技術であるため,キラーアプリケーションが出ていない.典型的な利用法が示されれば,現時点のラマン散乱分光顕微鏡でも,生物学にブレークスルーを起こす可能性がある.
次に,顕微鏡の普及である.生物学者にとってはラマン分光はまだまだなじみの薄い技術であるため,キラーアプリケーションが出ていない.典型的な利用法が示されれば,現時点のラマン散乱分光顕微鏡でも,生物学にブレークスルーを起こす可能性がある.