NISTEP注目科学技術 - 2023_E164

概要
アジャイル・ガバナンスと呼ばれる、Society 5.0に即した新たなガバナンスシステムがここ数年来コンセプトとして注目を集めてきたが、デジタル臨調のデジタル原則に採用され、また、G7のデジタル・技術大臣会合において、その大臣宣言でその社会実装の必要性が法的なフレームワークの整備と共に承認されたこともあり、コンセプトワークの段階から、各種の法制度を整備し、具体的に社会実装されるフェイズに入っている。このアジャイル・ガバナンスが実装されることにより、統治構造そのものが、①政府を中心とする垂直的・静態的なものから、官民協働する水平的・動態的なものへと変化し、②法の支配の射程が狭義の法のみならず、アルゴリズム等をも含むものへと変化し、③それに伴って様々な意味での「権力」の統制手法が変化することになることから、法学においては根本的な概念に対する再検討や、より学際的な研究手法の採用など、大きな変化が必要とされることになると考えられる。
キーワード
ガバナンスイノベーション / Society 5.0 / アジャイル・ガバナンス
ID 2023_E164
調査回 2023
注目/兆し 注目
所属機関 大学
専門分野 その他
専門度
実現時期 5年未満
分析データ 推定科研費審査区分(中区分) 6 (政治学)
分析データ クラスタ 29 (社会心理学・行動経済学)
研究段階
コンセプトとしては、相当明確になっており、現在NEDOなどにおいて実証事業が進んでいる段階である。
インパクト
いわゆるSociety 5.0の基盤となる、AI・ロボットを含むサイバー・フィジカルシステムの統治に必須のシステムであるため、本統治システムが具現化されることにより生じる波及効果は、新たの知の創出、新たな技術の創出への寄与、新たな産業の創出、産業競争力の向上、個人・社会の安全・安心の維持・向上、個人・社会の健康・幸福度向上、社会的基盤の強化、地域社会への貢献、社会の福祉・公正性や不平等問題への貢献、エネルギー問題への貢献、社会問題の解決、国際社会への貢献など、様々なものに及ぶと考えられる。
必要な要素
既存の法学の枠組みを超えた取り組みが必要となるため、学際的な研究についての基盤整備を一層進めていく必要がある。とりわけ、先端科学技術ガバナンスに関する法学研究者は極めて少なく、研究資金等も限られているため、早急に人的・物的資源を手当する必要がある。また、単なる技術開発だけでは、例えば、法制度や社会システムに関するアイデアとセットで技術を展開するEUなどに勝つことは難しく、また、日本のAI・ロボット開発の方向性は例えば、EUの方向性とは合致していない部分も多いため、法制度や社会システムに関する基本的な発想についてもパッケージを作り、それがEUにも受け入れ可能であること(あるいはG7会合で承認されたプリンシプルに則っていること)を明確化することが、長期的な産業の発展やSociety 5.0の実現に必要不可欠であると考えられる。