NISTEP注目科学技術 - 2023_E162

概要
T細胞、B細胞の抗原受容体(T細胞受容体および抗体)の遺伝子塩基配列から、その抗原受容体が認識する抗原エピトープを予測する技術。抗体に対しては、抗原エピトープのアミノ酸配列および候補となるタンパク質、抗原受容体に関しては、抗原ペプチドのアミノ酸配列および、抗原ペプチドを提示しうるMHCの型を予測する。
キーワード
免疫学 / 人工知能 / 量子コンピューター
ID 2023_E162
調査回 2023
注目/兆し 注目
所属機関 大学
専門分野 ライフサイエンス
専門度
実現時期 5年以降10年未満
分析データ 推定科研費審査区分(中区分) 49 (病理病態学、感染・免疫学)
分析データ クラスタ 56 (臨床医療/内科・病態解明・診断法)
研究段階
ヒトでも、T細胞、B細胞の抗原受容体(T細胞受容体および抗体)の遺伝子塩基配列を網羅的に解析することは行われている。特にガンの研究分野では盛んであり、また新型コロナウイルス感染症研究でも多いに使用されて来た。一方で、抗原受容体(T細胞受容体および抗体)の遺伝子塩基配列から正確に認識抗原を予測する技術はまだ確立されていない。いまのことろ、抗原ライブラリーと、該当する抗原受容体を発現するT細胞を共培養し、T細胞の反応性を評価することで認識抗原を特定したり、抗原ライブラリーと抗体との反応性から抗体が認識する抗原を特定するなど、主にwet実験に依存しているところが大きい。
インパクト
免疫学研究者だけでなく、AIや構造解析など数理工学専門家との連携が必要であり、その点で日本は欧米に比べて異分野融合研究が遅れているため、ますますの推進が必要であると感じる。

がん: がん患者のT細胞抗原受容体の網羅解析から、認識抗原が特定できれば、免疫原生の高い新生抗原(抗腫瘍免疫応答が期待できる)の特定につながり、CAR-T細胞やがんワクチンのオーダーメイド医療の実現化が期待できる。

感染症: 軽症患者のT細胞抗原受容体の網羅解析から、高い感染防御が期待できる病原体由来抗原の特定が可能となり、免疫誘導能の高いワクチンの開発に繋がる。

自己免疫疾患: いまだ自己抗原が不明の自己免疫疾患が多く残されており、病態解明の一助となりうる。
必要な要素
免疫学研究者だけでなく、AIや構造解析など数理工学専門家との連携が必要であり、その点で日本は欧米に比べて異分野融合研究が遅れているため、ますますの推進が必要であると感じる。