NISTEP注目科学技術 - 2020_E247
概要
「薄膜の分子集合構造制御技術」.これは今すぐに取り組むべきテーマで,国が推進する薄膜デバイスの開発のボトルネックとなっている難題を克服可能にする技術であると同時に,学術的に極めて重要な空白地帯です.同じ機能性化合物でも,分子を寝かせるのか倒立させるのかで,まったく違う物性と応用用途が現れます.こうした分子の並び方を,分子集合構造を表す構造パラメータの一つ,「分子配向」と言います.現状では,分子配向を官能基ごとに直ちに正確に分析し,その構造情報をもとに制御する基礎化学が構築できていないため,勘や経験に頼った総当たり的な研究で無駄が多く,最先端のデバイス分野が世界的な行き詰まりを見せています.日本では,世界に先駆けてこの難題を突破する分光解析手法多角入射分解分光(MAIRS)法が実用化され注目度が高まっており,今まさに世界を大きくリードできるポイントにいます.国策課題として分子集合構造の制御技術を取り上げることで,産官学にわたる多くの研究者を巻き込んだ,一大ムーブメントを起こせます.もちろん日本発の世界的な波及が期待されており,ノーベル賞級のインパクトが狙えるでしょう.創造性の範囲も,電子デバイス,ウイルスなどのバイオセンサー,パーキンソン病のマーカータンパク質の解析に代表される医学応用など,薄膜デバイスが関わる領域は無限です.
キーワード
2020年調査にはこの項目はありません。
ID | 2020_E247 |
---|---|
調査回 | 2020 |
注目/兆し |
2020 ※2020年調査にはこの項目はありません。区別のため、便宜上 「2020」 としています。 |
所属機関 | 大学 |
専門分野 | ナノテクノロジー・材料 |
専門度 | - 2020年調査にはこの項目はありません。 |
実現時期 | 10年未満 |
分析データ 推定科研費審査区分(中区分) | 28 (ナノマイクロ科学) |
分析データ クラスタ | 54 (理化学/分子化学) |
研究段階
2020年調査にはこの項目はありません。
インパクト
2020年調査にはこの項目はありません。
必要な要素
薄膜の分子集合構造を定量的に理解して構造制御にフィードバックさせるには,作製した手元にある試料について,いかに多くの構造パラメータをラボレベルの装置で引き出せるかにかかっています.すなわち,分子配向に加えて,結晶多形,結晶化度,コンフォメーションなどを読みだすのに加えて,現在,解析が困難な「非晶質」の内部にある表面モルフォロジーを定量化できれば,薄膜だけでなく,固体燃料電池に用いられるイオン電導ポリマーの性能を,構造から読み解くこともできるようになります.これが実現できれば,まさにブレイクスルー.分子設計から大きく飛躍して「分子集合構造の設計と実現」が日常の技術となって,有機薄膜・固体材料の開発を中心にパラダイムシフトとなるでしょう.10年後には,あって当たり前の技術にできます.現時点では,上で述べた構造パラメータのうち,結晶化度と多形くらいしか読めない現状を考えると,この変化は非常に大きなインパクトです.とくに国産技術であるMAIRSがアメリカや中国に気づかれ始めている現在,日本で大きく展開することが必須であることはお分かりいただけると思います.