NISTEP注目科学技術 - 2023_E158
概要
フォトンカウンティングCT:
X線CT(Computed Tomography)は、対象物を様々な方向からX線で撮像・再構成処置をすることで、対象物の内部情報をデジタル情報として得ることができ、医療用、産業用の分野で多大な貢献をしている。
最近になって、特に医療分野でPCCT(Photon Counting CT)が注目され始めているが、これは従来の医療用X線CTの検出機構が、シンチレータとダイオードの組合せにより発生した電荷を積分処理した電流値で読み出すため、解像度、被曝量などの観点で様々な課題があった。PCCTは、半導体検出器を用いることで光子を直接計測することがポイントで、これにより解像度の向上、被爆量の低減、そして物質選択的なスぺクトラルイメージングを可能にすることで部分的にはMRI代替にもなる画期的なものである。また計測時間を飛躍的に高められるという報告もあり、スループット向上にも期待がある。1967年のGodfrey HounsfieldによるX線CTの開発以降、日本でも1975年に国産初号機(第一世代)が開発され、それ以降、第四世代まで、さらにはヘリカルスキャンといった進化を続けてきたものの、検出器の素材・構成は約25年間も進歩が停滞していたとされ、それを打ち破る画期的な方式である。医療分野では、早期診断・予防医療の重要性が高まってきており、高精細化によってこれまで検知できなかった疾患を早期に発見できることは画期的であり、既述の様々な機能・性能改善によって、診断や治療の面で飛躍的な進歩を促すイノベーションと言える。高コストの点やMRI代替機能をどこまで追求するかなど、様々な課題もあるが、将来的に、従来のX線CTの全てがPCCTに置き換わっていくこともあり得る。
産業用X線CTについては、様々な用途があって撮像目的が多様であるが、高解像度や高スループットの必要性は高い。しかしながら技術上のネックとして、X線の線量が大きいと検出器に大量のX線光子が入射し、パイルアップを起こし、計数が正確にできないことがある。線量を落とすと計測時間が長くなるので、実用的には大きなデメリットになるので、現時点では産業用X線CTに適用することは難しいと思われるが、今後の技術開発の発展状況によっては、この分野でも大きなイノベーションに繋がる可能性はあると思われる。
X線CT(Computed Tomography)は、対象物を様々な方向からX線で撮像・再構成処置をすることで、対象物の内部情報をデジタル情報として得ることができ、医療用、産業用の分野で多大な貢献をしている。
最近になって、特に医療分野でPCCT(Photon Counting CT)が注目され始めているが、これは従来の医療用X線CTの検出機構が、シンチレータとダイオードの組合せにより発生した電荷を積分処理した電流値で読み出すため、解像度、被曝量などの観点で様々な課題があった。PCCTは、半導体検出器を用いることで光子を直接計測することがポイントで、これにより解像度の向上、被爆量の低減、そして物質選択的なスぺクトラルイメージングを可能にすることで部分的にはMRI代替にもなる画期的なものである。また計測時間を飛躍的に高められるという報告もあり、スループット向上にも期待がある。1967年のGodfrey HounsfieldによるX線CTの開発以降、日本でも1975年に国産初号機(第一世代)が開発され、それ以降、第四世代まで、さらにはヘリカルスキャンといった進化を続けてきたものの、検出器の素材・構成は約25年間も進歩が停滞していたとされ、それを打ち破る画期的な方式である。医療分野では、早期診断・予防医療の重要性が高まってきており、高精細化によってこれまで検知できなかった疾患を早期に発見できることは画期的であり、既述の様々な機能・性能改善によって、診断や治療の面で飛躍的な進歩を促すイノベーションと言える。高コストの点やMRI代替機能をどこまで追求するかなど、様々な課題もあるが、将来的に、従来のX線CTの全てがPCCTに置き換わっていくこともあり得る。
産業用X線CTについては、様々な用途があって撮像目的が多様であるが、高解像度や高スループットの必要性は高い。しかしながら技術上のネックとして、X線の線量が大きいと検出器に大量のX線光子が入射し、パイルアップを起こし、計数が正確にできないことがある。線量を落とすと計測時間が長くなるので、実用的には大きなデメリットになるので、現時点では産業用X線CTに適用することは難しいと思われるが、今後の技術開発の発展状況によっては、この分野でも大きなイノベーションに繋がる可能性はあると思われる。
キーワード
フォトンカウンティング / X線CT / 半導体検出器
ID | 2023_E158 |
---|---|
調査回 | 2023 |
注目/兆し | 注目 |
所属機関 | 大学 |
専門分野 | ものづくり |
専門度 | 中 |
実現時期 | 5年以降10年未満 |
分析データ 推定科研費審査区分(中区分) | 52 (内科学一般) |
分析データ クラスタ | 43 (医用画像工学) |
研究段階
●医療用:
具体的な例として、
・シーメンスヘルスケア:日本での製造販売の認証取得(2022年1月)
東海大学での臨床応用開始(2022年6月)
・キャノンメディカル:国立がん研究センタで実用化に向けた研究開始(2022年11月)
・富士フィルムヘルスケア:千葉大学と臨床有用性を評価する共同研究開始(2023年3月)
などがある。本格的な実用化・普及に向けての研究開発が継続的に行われている段階と思われる。
●産業用:
大学・研究機関と企業との共同研究が進められている段階と推定する。
具体的な例として、
・シーメンスヘルスケア:日本での製造販売の認証取得(2022年1月)
東海大学での臨床応用開始(2022年6月)
・キャノンメディカル:国立がん研究センタで実用化に向けた研究開始(2022年11月)
・富士フィルムヘルスケア:千葉大学と臨床有用性を評価する共同研究開始(2023年3月)
などがある。本格的な実用化・普及に向けての研究開発が継続的に行われている段階と思われる。
●産業用:
大学・研究機関と企業との共同研究が進められている段階と推定する。
インパクト
●医療用:
次世代X線CTとして、従来のX線CTが全てPCCTに置き換わる可能性があるほどのパラダイムシフトが起こる可能性がある。日本は、X線CTの総台数および人口当たりの台数でも世界トップであり、そのインパクトは極めて大きい。また医療分野における早期診断・予防医療、診断、治療などで、高解像度、低線量被曝、高スループット、物質選択的なスぺクトラルイメージングによる部分的なMRI代替など、画期的な効果が期待できる。
●産業用:
現時点では技術的実現性が不明であるが、高解像度の実現はX線CTによるデジタルエンジニアリングの価値を飛躍的に高め、産業競争力の向上に大きく貢献する。
次世代X線CTとして、従来のX線CTが全てPCCTに置き換わる可能性があるほどのパラダイムシフトが起こる可能性がある。日本は、X線CTの総台数および人口当たりの台数でも世界トップであり、そのインパクトは極めて大きい。また医療分野における早期診断・予防医療、診断、治療などで、高解像度、低線量被曝、高スループット、物質選択的なスぺクトラルイメージングによる部分的なMRI代替など、画期的な効果が期待できる。
●産業用:
現時点では技術的実現性が不明であるが、高解像度の実現はX線CTによるデジタルエンジニアリングの価値を飛躍的に高め、産業競争力の向上に大きく貢献する。
必要な要素
●医療用:
・技術的要素として、低コスト化
・社会的要素として、日本の場合はX線CTの総台数に対して放射線科医・技師の数が不足して
おり、普及のためにはこの面での改善が必要
●産業用:
・検出器のX線量アップに対する計数特性の向上
・技術的要素として、低コスト化
・社会的要素として、日本の場合はX線CTの総台数に対して放射線科医・技師の数が不足して
おり、普及のためにはこの面での改善が必要
●産業用:
・検出器のX線量アップに対する計数特性の向上