NISTEP注目科学技術 - 2020_E128
概要
NTTが中心となって進めているIOWN構想である。AIを含む情報通信技術(ICT)の発展が今後の世界に重要であることは明らかであるが、それにエレクトロニクスと光技術(フォトニクス)を融合して新展開を図ろうとするものである。これまでICTの発展を支えてきたエレクトロニクスの限界、すなわち集積化においていわゆるムーアの法則を維持できないとの危惧が背景にある。従って、その要諦は光集積回路などの光情報処理技術の活用である。電子の伝導を用いたエレクトロニクスは、非常に大雑把に言えば電子の大きさが小さいためデバイスの微細化が容易であり、ナノテクノロジーの主役であるSi系の加工技術の目を見張る発展もあってコストの低下も著しかった。高速性に優れた光を用いたフォトニクスは、伝送路としての光ファイバーの利用に留まり、通常使われる光の波長が数百ナノメートルと長いことからナノ空間への閉じ込めが困難で、演算などへの適用は研究レベルに留まっていた。しかしながら、ナノフォトニクスと呼ばれる微小光素子を実現する技術、方法論が成熟した昨今、漸く実用化へのスタートを切ることとなった。IOWN構想では、オールフォトニクスネットワークの名称で、その概念が語られている。
この科学技術の特長は、エレクトロニクスかフォトニクスかの択一ではなく、両者の融合にある。これは近年のノーベル物理学賞においても見られ、例えば、光周波数コム技術の開拓によって、数百テラヘルツの可視光の周波数をヘルツ以下の単位で計測できることとなった。これには、フォトニクスの主役であるレーザーとエレクトロニクスで多用されるスペクトラムアナライザの融合が鍵であった。これを利用して、光格子時計という我国発の先端技術を用いれば、時刻を刻む精度を18桁まで上げることができる。この精度は、一般相対性理論が予測する重力による時間の遅れを検出可能で、重い元素の探索が可能など、異次元の応用が拓かれる可能性がある。この点も、IOWN構想に盛り込まれている。
上記の光格子時計に留まらず、光通信技術とそれに関わる半導体レーザーの開発、実用化においても、我国の貢献は非常に大きいものがあった。この意味でも、エレクトロニクスとフォトニクスを融合した科学技術は、我国が世界の先頭を切って推進するにふさわしいものである。
この科学技術の特長は、エレクトロニクスかフォトニクスかの択一ではなく、両者の融合にある。これは近年のノーベル物理学賞においても見られ、例えば、光周波数コム技術の開拓によって、数百テラヘルツの可視光の周波数をヘルツ以下の単位で計測できることとなった。これには、フォトニクスの主役であるレーザーとエレクトロニクスで多用されるスペクトラムアナライザの融合が鍵であった。これを利用して、光格子時計という我国発の先端技術を用いれば、時刻を刻む精度を18桁まで上げることができる。この精度は、一般相対性理論が予測する重力による時間の遅れを検出可能で、重い元素の探索が可能など、異次元の応用が拓かれる可能性がある。この点も、IOWN構想に盛り込まれている。
上記の光格子時計に留まらず、光通信技術とそれに関わる半導体レーザーの開発、実用化においても、我国の貢献は非常に大きいものがあった。この意味でも、エレクトロニクスとフォトニクスを融合した科学技術は、我国が世界の先頭を切って推進するにふさわしいものである。
キーワード
2020年調査にはこの項目はありません。
ID | 2020_E128 |
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調査回 | 2020 |
注目/兆し |
2020 ※2020年調査にはこの項目はありません。区別のため、便宜上 「2020」 としています。 |
所属機関 | 大学 |
専門分野 | ナノテクノロジー・材料 |
専門度 | - 2020年調査にはこの項目はありません。 |
実現時期 | 10年未満 |
分析データ 推定科研費審査区分(中区分) | 21 (電気電子工学) |
分析データ クラスタ | 38 (計算機・電気通信・通信デバイス・量子計算機) |
研究段階
2020年調査にはこの項目はありません。
インパクト
2020年調査にはこの項目はありません。
必要な要素
大雑把に言れば、(質量を持たない光を使った)フォトニクスは(有限な質量を持った電子を使う)エレクトロニクスに比べて、その高速性は圧倒的であり、光同士あるいは透明な材料との相互作用が小さいことから、信号の混信や伝達損失の問題が回避できる。従って、伝送路としての光ファイバーがいち早く実用化し、光通信技術と呼ばれている。一方、信号同士の演算が必須な情報処理において、この特長は欠点となってしまう。すなわち、光信号の演算処理が容易でない。そもそも、真空中では光同士は相互作用を生じないため、光信号と光信号の間で相互作用を起こすには、間に物質が介在する必要がある。この際、2つの同一な光信号を足しても信号が2倍にならない(非線形な)現象が生じるが、これを非線形光学応答と呼ぶ。この応答を発現する性能は光学非線形性と呼ばれており、これが大きな材料を探索することが課題となる。この問題解決には、以下のような手法が知られている。
第一に、物質を構成する分子そのものを設計・合成する化学的な手法、あるいは結晶を設計・成長させる物性物理的手法など、物質科学からのアプローチがある。これには理論計算やいわゆるマテリアルインフォ―マティクスも活躍しているが、決定打はない。未だに、最適な分子構造あるいはその配列構造が探索されている。固体材料としても、高温超伝導で有名ないわゆる強相関電子系は有力であるなどの指摘もあるが、探索の途上である。
次に、光や物質の微細化による非線形光学応答の増強が挙げられる。素朴には、光を狭い物質中に閉じ込めて両者の相互作用を増大させる目論見と捉えられる。この方向が、いわゆるナノフォトニクスである。光の波長程度の周期構造を作製するフォトニック結晶、さらに微細な構造を原子に見立てて配列させて光に対する新物質を創成するメタマテリアル、それを作製しやすいように二次元化したメタサーフェスなど、色々な手法が考案されている。しかし、まだ桁違いの性能に至っているものはない。
上記の現状において、実際には光学非線形性の大きさのみならず、その応答速度も重要であることを追記しておく。例えば、光照射によって相転移を生じるような場合、非線形光学応答も巨大になるが、応答速度が遅くフォトニクスのメリットが得られない。従って、高速性を備えた巨大な光学非線形性の実現が求められている。
第一に、物質を構成する分子そのものを設計・合成する化学的な手法、あるいは結晶を設計・成長させる物性物理的手法など、物質科学からのアプローチがある。これには理論計算やいわゆるマテリアルインフォ―マティクスも活躍しているが、決定打はない。未だに、最適な分子構造あるいはその配列構造が探索されている。固体材料としても、高温超伝導で有名ないわゆる強相関電子系は有力であるなどの指摘もあるが、探索の途上である。
次に、光や物質の微細化による非線形光学応答の増強が挙げられる。素朴には、光を狭い物質中に閉じ込めて両者の相互作用を増大させる目論見と捉えられる。この方向が、いわゆるナノフォトニクスである。光の波長程度の周期構造を作製するフォトニック結晶、さらに微細な構造を原子に見立てて配列させて光に対する新物質を創成するメタマテリアル、それを作製しやすいように二次元化したメタサーフェスなど、色々な手法が考案されている。しかし、まだ桁違いの性能に至っているものはない。
上記の現状において、実際には光学非線形性の大きさのみならず、その応答速度も重要であることを追記しておく。例えば、光照射によって相転移を生じるような場合、非線形光学応答も巨大になるが、応答速度が遅くフォトニクスのメリットが得られない。従って、高速性を備えた巨大な光学非線形性の実現が求められている。