NISTEP注目科学技術 - 2023_E137

概要
AIや情報と人間社会の向き合い方に関する法の実装とその基盤となる哲学的検討が社会的に必要になってくるであろう。
AIや情報と人間社会の向き合い方に関する法の実装については、例えば生成系AIであるChat GPTが社会で使われるようになることで、実社会の必要に迫られるなかで法整備は行われていくだろう。法の実装には国際規範・法レベルと国内法レベルがあり、それぞれの整備が必要になる。既に社会で共有されている情報を基盤として、生成系AIが生成したデータを誰のものとすべきか、そもそもどの程度の情報を社会で共有すべきか、という規範は、国内法レベルにとどまらず国際規範・法レベルでも策定される必要があるし、策定されるであろう。
その上で困難なのはAIと人間に関する哲学的な検討であると考えられる。例えば人間が「人権」を持っていると理解されているが、「AI権」は認められるのか、というのは重要な論点になりうる。多くの国の現状の法制度ではこのようなことは認められないであろうが、AIがさらに社会に浸透していく中で、社会の価値観が変化していく可能性もある。その際にいかに法的な問題や哲学的な問題に取り組むかは重要である。これまでAIを含む科学技術との関係で法などの視点は倫理的・法的・社会的課題(ELSI)と呼ばれ、技術開発のブレーキとなる印象も強かったように思われる。しかしブレーキやアクセルといった視点ではなく、科学技術の進展に伴い社会が変化する中で、法や倫理・哲学はいかに向き合うべきか、ということを検討していく必要があると考えられる。こうした新たな社会における法のあるべき姿や、その基盤となる哲学を検討することは、現在の社会規範と衝突することもすらもありうるため、困難であると考えられる。しかし新たな社会における科学技術の役割を考え、法の役割を検討するためには、必要な取り組みであると考える。
キーワード
AI / / 哲学 / 生成系AI / 人権
ID 2023_E137
調査回 2023
注目/兆し 注目
所属機関 大学
専門分野 その他
専門度
実現時期 5年未満
分析データ 推定科研費審査区分(中区分) 5 (法学)
分析データ クラスタ 29 (社会心理学・行動経済学)
研究段階
日本を含めた世界各国で法整備の議論が進んでいる。
インパクト
AIや情報を人間社会でいかに位置付けるかが明確になり、AIの利活用が進み、また望ましくないと思われる分野では利活用が制限されると考えられる。
必要な要素
法整備は早い段階で実現が可能であろうが、その基盤となる哲学的な理解をいかにしていくかが困難であると考えられる。AIが社会でさらに浸透し、多くの人がAIと向き合い、AIとの向き合い方をある程度明確になる必要がある。