NISTEP注目科学技術 - 2022_E386
概要
核融合発電の実現は人類史上最大の投資を伴う事業となるが、日本が自国で真のカーボンニュートラル達成、発電燃料の十分な確保、世界に先駆けての技術構築達成する観点から、推進すべき科学技術である。
核融合発電開発の現状:国際熱核融合実験炉ITERは、日本も機関国である国際プロジェクトである。2025年からプラズマ実験を開始し、2035年頃に重水素-三重水素プラズマによる核燃焼プラズマ実験を開始予定である。ITERではエネルギー利得(入力エネルギーに対する出力エネルギーの比)で10を目指しており、核融合発電炉実証を目指す。日本は、燃料の一つである三重水素を効率的に使用するために自己増殖技術、循環および再利用技術を独自に開発しており、次の原型炉設計への展開もすでに進められている。これら燃料に関する技術と装置を総括して保有するのは日本だけであり、世界に先んじて核融合発電を実現する可能性が高い。
核融合発電開発の現状:国際熱核融合実験炉ITERは、日本も機関国である国際プロジェクトである。2025年からプラズマ実験を開始し、2035年頃に重水素-三重水素プラズマによる核燃焼プラズマ実験を開始予定である。ITERではエネルギー利得(入力エネルギーに対する出力エネルギーの比)で10を目指しており、核融合発電炉実証を目指す。日本は、燃料の一つである三重水素を効率的に使用するために自己増殖技術、循環および再利用技術を独自に開発しており、次の原型炉設計への展開もすでに進められている。これら燃料に関する技術と装置を総括して保有するのは日本だけであり、世界に先んじて核融合発電を実現する可能性が高い。
キーワード
核融合発電 / 磁場閉じ込め方式 / レーザー方式 / 水素製造 / 余剰熱利用 / ITER / 火星居住 / 超伝導コイル / カーボンニュートラル
ID | 2022_E386 |
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調査回 | 2022 |
注目/兆し | 注目 |
所属機関 | 公的機関 |
専門分野 | エネルギー |
専門度 | 高 |
実現時期 | 10年以降 |
分析データ 推定科研費審査区分(中区分) | 14 (プラズマ学) |
分析データ クラスタ | 36 (熱・流体・波・運動エネルギー) |
研究段階
核融合発電の炉心となる超高温プラズマの運転条件は、第1世代発電炉については設計が固まっている。この実証実験がITERの役割であり、核融合反応の検証が2035年以降に実施される。第1世代発電炉の工学設計は既存技術もしくは現在進行中の開発研究をベースとしており、ITERにおける核融合運転の実証と時系列を合わせて、科学技術的な根拠を持って合理的な設計を示すことはできる。
併せて、わが国独自の発電実証を行う核融合原型炉の設計活動が活発に進められている。材料開発ではプラズマに面する材料への高熱負荷および核融合反応で発生する中性子に伴う損傷効果、材料の放射化が指摘されているが、要素研究により改善が進められるとともに、バックキャスティングに基づく材料開発や放射化材料の除染技術に関する課題の集約と具体化が進められている。また、燃料トリチウムの安全・高効率利用に関する循環系設計およびその要素技術の研究も進められている。このような研究は、世界的にも日本が最も先んじている。さらに近年核融合ベンチャー(例えば京都ヒュージョニアリング社)の飛躍的な活躍が広く報道されて、より早期の発電実証が期待されている。
併せて、わが国独自の発電実証を行う核融合原型炉の設計活動が活発に進められている。材料開発ではプラズマに面する材料への高熱負荷および核融合反応で発生する中性子に伴う損傷効果、材料の放射化が指摘されているが、要素研究により改善が進められるとともに、バックキャスティングに基づく材料開発や放射化材料の除染技術に関する課題の集約と具体化が進められている。また、燃料トリチウムの安全・高効率利用に関する循環系設計およびその要素技術の研究も進められている。このような研究は、世界的にも日本が最も先んじている。さらに近年核融合ベンチャー(例えば京都ヒュージョニアリング社)の飛躍的な活躍が広く報道されて、より早期の発電実証が期待されている。
インパクト
2022年調査にはこの項目はありません。
必要な要素
核融合発電の実現では、技術の開発とともに、社会的な判断が不可欠である。これは、前項目「注目科学技術の概要」において核融合発電の社会的・技術的な位置付けとして3項目を記載した。新型コロナウィルス禍では、ウィズ・コロナという言葉が示すように、日々の新型コロナ対策だけでなく、長期的な視点で社会活動の持続する方法の検討が必要なことが改めて示された。持続可能な社会のためには長期戦略として島国である日本が自国の電力発電は必須であり、かつ北海道胆振東部地震(2018年9月)で生じた大規模停電(ブラックアウト)回避のためにも電力分散(細目:リスクマネジメントに記載あり)に向けた国家戦略も必要である。また、2月以降のロシアによるウクライナ侵攻に伴うエネルギー輸入およびコスト増加に関する懸念も含め、大電力・ベースロード発電が可能な核融合発電を我が国が新たな手法として確保することはさらに重要度を増している。核融合発電はコスト評価も課題として残るが、それも含めてこのように、社会と情報を深く共有し日本の地政学見地を考慮した核融合発電に関する戦略を構築する必要がある。