NISTEP注目科学技術 - 2022_E378

概要
バーチャルリアリティ(VR)環境における自分自身の仮想の姿であるアバタ技術は、バーチャルYouTuberの商業的な成功とともに注目を浴びている。現在のバーチャルYouTuberはアバタが単体で身振り手振りで喋るだけであるが、今後は仮想空間内で他のアバタ等とコミュニケーションをするなど、社会的なコミュニケーションを考慮した機能が必要となる。Facebookがメタバースに注目すると公式に宣言したこともあり、この仮想空間内でのアバタを実現する技術は大きく注目されてきており、人々が自然と仮想空間(メタバース)に参加し、アバタを操作する技術や、アバタを通じてメタバースを感じるような入出力デバイスとインタフェース・インタラクション技術が多数研究開発が行われている。これらはヒューマンエージェントインタラクションやバーチャルリアリティ分野において研究が行われてきており、特に社会的アバタの在り方等についてELSIの観点からからも研究を進めるべきであるという意見も多い。さらに、デジタルツインを実現するアバタ技術も注目されており、人文社会科学を巻きこんで今後大きく発展する可能性がある科学技術分野である。
キーワード
アバター / エージェント技術 / 代理エージェント / デジタルツイン / バーチャルリアリティ / メタバース / テレプレゼンス / テレイグジステンス / ヒューマンエージェントインタラクション
ID 2022_E378
調査回 2022
注目/兆し 注目
所属機関 大学
専門分野 情報通信
専門度
実現時期 10年以降
分析データ 推定科研費審査区分(中区分) 61 (人間情報学)
分析データ クラスタ 18 (マシンインテリジェンス/ロボティクス・人間工学)
研究段階
自己表現の媒体としてのアバタやエージェントは、すでにバーチャルYouTuberの商業的な成功を代表としてすでに完成に近づいている。一方で、社会的インタラクションやコミュニケーションを実現するアバタや、自らの代理エージェント、デジタルツインとしてのアバタ・エージェントは、ユーザ自身の思想や思考などのデジタル再現するための技術、ユーザの意図通りにアバタ・エージェントを操作するための技術、仮想空間(メタバース)でのインタラクションやコミュニケーションを五感を使って体験できるようにする技術など、今後、商業化に向けて大きく技術革新が求められるものも多い。一方で、段階を踏んで進展していくことができる研究分野であるため、マイルストーンの設定は容易であり、確実に進展していく分野であると言える。
インパクト
2022年調査にはこの項目はありません。
必要な要素
ユーザの意図を正確に仮想空間で再現するためのインタフェース技術や、仮想空間内での現象をユーザの五感を使って感じることができるようにするディスプレイ技術など、入出力に関する技術開発の進展が必要である。また、「心理学はバーチャルリアリティにおける物理学である」と言われるように、仮想空間内でアバタやエージェントによって人間を再現するためには、人間の理解に基づく技術開発が必要となる。人文社会科学、認知科学など、幅広い分野との連携に基づく大きな研究コミュニティの構築も必要である。本科学技術の本当の価値は「人間を再現する」ことであり、このためには既存の多くの学術分野(医学を含む)からプレイヤーを集め、研究を推進することが必要となる。