NISTEP注目科学技術 - 2022_E348

概要
「DNAナノテクノロジー」という研究分野を非常に注目しています。DNA分子を材料に、超微細な形状を持った構造を作製する研究分野です。従来のナノテクノロジーと比べ、高精度に・簡単に・大量に分子材料を合成できる点が画期的と言えます。高精度になる理由は、DNA分子が2ナノメートル程度の分子材料であることに由来し、従来のUVや電子ビームリソグラフィーの物理限界(13.5~195ナノメール)より高い性能を持ちます。作製手順が簡単であることも重要なファクターです。DNA分子が水溶液中に混ざると、自己集合と呼ばれる現象により、自発的に形状が構成されます。従来のナノテクノロジーとは異なり、大型の装置などは必要がなく、事前に設計したDNA分子を単に混ぜるだけです。また、材料は分子ですので、一度の操作で1000億個程度の構造を大量に合成することが可能です。
キーワード
DNAナノテクノロジー / DNAデバイス / DNAオリガミ / DNAタイル / DNAナノ構造 / DNA origami
ID 2022_E348
調査回 2022
注目/兆し 注目
所属機関 大学
専門分野 ナノテクノロジー・材料
専門度
実現時期 5年以降10年未満
分析データ 推定科研費審査区分(中区分) 28 (ナノマイクロ科学)
分析データ クラスタ 54 (理化学/分子化学)
研究段階
すでに、100ナノメートル程度の単一のDNA構造体を作製する方法論「DNAオリガミ」が確立しています。また、DNAの構造体を機能化させ、薬剤分子との結合、構造体の変形、構造体同士の結合、なども実現されています。しかしながら、現時点ではあまり実用的な応用例が存在してない状況です。今後は、様々なアプローチにより、実用的な機能を持ったDNA構造体の作製に研究が進むと考えられます。例えば、超精密な実験を行う分子プラットフォーム、薬剤分子の放出を制御するスマート分子ドラッグ、従来のナノテクノロジーと融合させた超超微細可能技術、などが考えられます。それらを実現するためには、他の分野との連携方法などを調べる基礎研究が必要になってくると考えられます。
インパクト
2022年調査にはこの項目はありません。
必要な要素
DNAナノテクノロジーの要素技術は成熟ししつあるものの、関連技術との連携が進んでいない状況にあると言えます。今後は「生化学」や「バイオテクノロジー」などの関連分野と協調できる枠組みを積極的に作っていく必要があると考えられます。また、研究者が必ずしも世間のニーズや経済的な損益を考えて研究しているわけではないため、産業界との結びつきを持つ機会も必要になってくると思います。