NISTEP注目科学技術 - 2022_E338

概要
ディープラーニングやAIによる交換相関汎関数の開発。
密度汎関数理論は既に多くの研究で採用されているシミュレーションツールとなっている。
しかしながら、基底状態の電子を正確に記述する汎関数は数値的に求めるしかなく、
これまで様々な思想による開発が続けれらてきた。
この汎関数の問題は物性値の予測に直接影響を及ぼすうえ、計算時間も精度を上げると増加する傾向にあり一つの根源的な問題となっていると考えている。
しかし、昨今は機械学習を始めとするAIの力で、ユニバーサルな汎関数の提案が可能となってきている。
これは今まで計算のパラメータ化していた汎関数の問題を一気に解決する可能性を秘めている。
キーワード
密度汎関数理論 / 第一原理計算 / 機械学習 / AI / マテリアルズ・インフォマティクス
ID 2022_E338
調査回 2022
注目/兆し 注目
所属機関 公的機関
専門分野 ナノテクノロジー・材料
専門度
実現時期 5年以降10年未満
分析データ 推定科研費審査区分(中区分) 60 (情報科学、情報工学)
分析データ クラスタ 1 (データサイエンス/情報数学・離散数学・数値計算)
研究段階
今は特定の物質群に対して電子構造を比較的精度よく予測できる段階である(デモンストレーション段階)。したがって、真にユニバーサルな汎関数を見出すにはまだまだ時間を要するであろう。また、いわゆるAIがだしてきたその汎関数を人間が理解できるかなどの問題もある。しかし、シミュレーションによって物性を高速に予測するという目的ベースであればブラックボックス化して進めてしまっても良いかもしれない。いずれにせ、現段階では汎関数の普遍化への道筋は見えていないと思われる。
インパクト
2022年調査にはこの項目はありません。
必要な要素
やはり実験的なデータベースの整備や計算結果を検証する強力な実験家との協業が重要となってくると思われる。
残念ながら計算結果を検証するだけの実験を十分に行っていないケースがほとんどであり、
また比較データが古い文献に依存しているなどの問題もあると思われる。
このような背景から国プロなどで実際のシミュレーションの予測がどの程度実験と整合するのかを検証するような、特別なチームを作ってこの分野の知見を蓄積していく必要があると思われる。