NISTEP注目科学技術 - 2022_E265

概要
リンは生体に必須の元素で、食料生産のための肥料や飼料にも不可欠である。また、広範な工業分野でも必要となる重要な元素である。日本は世界でもトップクラスのリン消費大国であるが、国内にリン鉱石資源をほぼ持たないため、リン資源は全量を海外からの輸入に頼っている。リン鉱石が限られた国々に偏在する資源であり、世界的な人口増加に伴う海外需要の拡大も確実であること、また鉱石の品位低下(リン含有率低下や重金属含有)も見込まれ、限られた資源であることと今後の供給不安のリスクがある。リン資源循環技術を結集することによって、輸入肥料使用量の節減を着実に実現し、リン鉱石資源の国際的な供給不安のリスクを低減することと、資源枯渇問題に対してリン鉱石の耐用年数を延ばすことに寄与できる。また、土壌や水圏といった環境中へのリン排出の負荷を削減することによって、赤潮や海洋酸素欠乏の発生など、プラネタリー・バウンダリーに示されているリン循環の高リスク評価の回避につなげ、持続的なリン資源循環利用社会の実現が達成できる。
キーワード
リン資源循環 / リン回収 / プラネタリー・バウンダリー / 黄リン / MAP法 / HAP法 / リン資源化
ID 2022_E265
調査回 2022
注目/兆し 注目
所属機関 公的機関
専門分野 ものづくり
専門度
実現時期 10年以降
分析データ 推定科研費審査区分(中区分) 64 (環境保全対策)
分析データ クラスタ 31 (環境化学)
研究段階
リン資源回収の対象として有望な食飼料由来のリン含有廃棄物として、下水汚泥は2016年時点の見積で年間に約4.2万トン-P、畜産副産物は年間に約6.8万トン-P排出されており、こうした廃棄物を効率的にリサイクルして肥料原料化することでリン鉱石の消費を節減できる。廃棄物の肥料としての利用では、食品廃棄物のように堆肥として農地に直接施用する方法のほか、下水処理場やし尿処理過程において薬剤調整によりリン酸マグネシウムアンモニウム(MAP法)やヒドロキシアパタイト(HAP法)として沈殿させ、回収して利用する方法が確立されている。また肥料原料としてだけでなく、廃棄物からの粗リン酸溶液の製造や高付加価値のリン化合物への変換技術開発、さらに高機能性リン化合物の出発原料として重要な黄リンを粗リン酸から省電力で製造できるイノベーション技術を確立できれば、リン化成品製造の原料化や化成品(例えば、リン酸エステルなど)の直接的合成が可能となり、リン化成品の国内自給体制の構築に向けた基盤形成ができるが、いずれもまだ基礎研究レベルである。
インパクト
2022年調査にはこの項目はありません。
必要な要素
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