NISTEP注目科学技術 - 2022_E264

概要
 1950年から2015年のプラスチックの総製造量は78億トンに達する.驚くべきことに,そのうち約半分は過去13年間に生産された.このままでは,いずれ資源の枯渇に直面する.この現状の解決に向けて,現行の廃プラスチックの処理方法 (2018年度,廃棄と熱リサイクルで計73%) を改め,あらゆるプラスチック廃棄物から原料へと再生産する資源循環法が求められる.この実現に向けて,製品から有機原料に分解するケミカルリサイクルの役割が今後重要となる.実際に,PSやPMMAなどの汎用プラスチック,ナイロンやPETなどいくつかのエンジニアリングプラスチックのケミカルリサイクルの研究開発が進められていて,より穏和な条件下で解重合できる技術に向けて,今後の発展が期待できる.一方,高安定で知られるPSUなどのスーパーエンジニアリングプラスチック,エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂,ゴムは,モノマーへの精密解重合が極めて難しく,これらをモノマーに分解できる革新的な方法論が求められる.
キーワード
ケミカルリサイクル / 樹脂分解 / モノマー化
ID 2022_E264
調査回 2022
注目/兆し 注目
所属機関 公的機関
専門分野 ものづくり
専門度
実現時期 5年以降10年未満
分析データ 推定科研費審査区分(中区分) 64 (環境保全対策)
分析データ クラスタ 31 (環境化学)
研究段階
 プラスチックのケミカルリサイクルは,高温下で実施するガス化分解が最も研究開発が進められ,実際に商業化されている.一方,モノマーへの精密分解は,概要にもしめしたとおり,PSやPMMAなどの汎用プラスチック,PUやPET,PAなどのいくつかのエンジニアリングプラスチックのケミカルリサイクルは精力的に研究が進められていて,工業化やその前段階に至る技術など,多くある.PEやPPはマテリアルリサイクルに関する研究が盛んに進められている.一方,高機能,高安定で知られるスーパーエンジニアリングプラスチック ,エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂,ゴムは,高い安定性ゆえモノマーへの変換は極めて困難である.事実,スーパーエンプラの化学分解に関して,現状,PPS,ポリエーテルスルホン(PESU)を対象とする数例しかない.
 プラスチックの種類にもよるが,現状はある程度エネルギーを要してでも原料有機物に戻す方法が採用されているが,今後のエネルギー効率を考えても,より穏和な方法で実施できる技術が求められる.
インパクト
2022年調査にはこの項目はありません。
必要な要素
要素は,先にも述べた通り,穏和な条件下,低資源,低エネルギーで実施できるケミカルリサイクル法の開発である.さらに言えば,一種類,または類似した数種類のプラスチックに選択的に実施できる方法,または広範なプラスチックに対応できる汎用的は技術が求められる.
プラスチックのケミカルリサイクルは技術のみが発展しても達成しえない.これを後押しする金融政策,簡便なごみ分別システムなどの社会工学の発展がともに求められる.