NISTEP注目科学技術 - 2022_E254
概要
タンパク質の構造と機能の相関を研究する上で、金属イオンとの特異的な相互作用を理解することは重要である。金属イオンとの結合部位のアミノ酸置換は、時には生命現象に致命的な影響を与えることもある。タンパク質のドメイン構造のアミノ酸配列は、生物種でかなりのアミノ酸置換があり、一部のアミノ酸が置換を受けても機能面で維持されることを意味する。タンパク質の構造機能相関を理解するためには、ドメイン構造でのアミノ酸置換の影響を系統的に研究することは意義がある。金属結合にアミノ酸側鎖が関わる場合に、赤外分光やラマン分光はX線結晶構造解析では得られない結合情報が期待できる。ドメイン構造となるペプチドをアミノ酸置換する技術の技術があれば、金属結合ドメインに関する詳細な情報が得られる。さらにはアミン酸を置換することにより、異なる金属イオンと特異的な結合する新規な機能を持ったドメイン構造の構築につながる。タンパク質やペプチドは分光学的手法を用いても、シグナルが弱いために情報を抽出することが難しいという現実がある。その打開策として、赤外分光では特異的同位体ラベル法、ラマン分光では表面増強ラマン分光に期待したい。
キーワード
新規な機能を持つペプチド / 金属イオンとの特異的相互作用 / 分子分光学
ID | 2022_E254 |
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調査回 | 2022 |
注目/兆し | 注目 |
所属機関 | 大学 |
専門分野 | ライフサイエンス |
専門度 | 高 |
実現時期 | 5年以降10年未満 |
分析データ 推定科研費審査区分(中区分) | 43 (分子レベルから細胞レベルの生物学) |
分析データ クラスタ | 5 (分子生物学/薬理学) |
研究段階
カルシウム結合タンパク質の金属結合ドメインのペプチド合成、アミノ酸置換はすでに取り組んでおり、あるタンパク質では赤外分光について研究報告が出ている。一方、ラマン分光によるカルシウム結合タンパク質の研究は、スペクトルの強度が弱く、スペクトルの解釈が難しいこともあり、最近はほとんど報告されていない。しかし、表面増強ラマン分光によるシグナル増強が現実的になれば、今後発展することが期待できる状況である。
インパクト
2022年調査にはこの項目はありません。
必要な要素
分子分光学の研究者人口が減っている状況で、生体関連分子にどれだけ関心を持つかが鍵である。
近年の学生の博士への関心が下がっている状況で、博士号取得後の就職先の確保が喫緊の課題である。
近年の学生の博士への関心が下がっている状況で、博士号取得後の就職先の確保が喫緊の課題である。