NISTEP注目科学技術 - 2022_E246

概要
例外点を用いたモード制御技術[Science 375, 884 (2022)]
利得・損失を持つ結合導波路レーザでは、例外点(Exceptional point: EP)と呼ばれるエネルギーが保存しない過程に基づく系(非エルミート系)に特有のモード縮退が現れる。このような系の利得・損失の空間分布を制御することで、系の断面である結合導波路の固有モード周波数は位置ごとに変化し、例外点の周りを周回することが可能である。利得・損失の空間分布が急峻な場合、固有モード間の動的なジャンプが起き、終状態が入力の方向によらず一定になるという、光デバイスでは実現しづらい非相反な特性を示す。本文献では、単一の結合導波路レーザを用いているにもかかわらず、例外点周回によるモード制御により、二つのデバイス端面においてレーザ光の出射空間モードが変わるという、従来に無いモード制御を行っている。
キーワード
非エルミートフォトニクス / トポロジカルフォトニクス / オンチップレーザ技術
ID 2022_E246
調査回 2022
注目/兆し 注目
所属機関 企業
専門分野 ナノテクノロジー・材料
専門度
実現時期 5年以降10年未満
分析データ 推定科研費審査区分(中区分) 21 (電気電子工学)
分析データ クラスタ 37 (電磁波・光学・レーザー・光半導体)
研究段階
紹介した通り、実験室レベルでの実験実証が報告されており、当該の技術を用いた有用なデバイスの提案があるか、また実用デバイスの開発が行われるかどうかにかかっている。
インパクト
2022年調査にはこの項目はありません。
必要な要素
非エルミートフォトニクスの研究分野では、レーザや導波路などの基本的な光デバイスのみを用いるにもかかわらず、従来に無い多様な光制御・現象が可能であることが報告されている。その中で、特に高いインパクトを持った何等かの成果が実用化される可能性が高いと考える。本文献はその一例であり、この技術単体の社会的効果が大きいわけではないが、オンチップ光通信・光計算・信号処理への応用を目指し、着々と成果を挙げ、また現在も広がりを見せる研究分野である。さらなる新原理・新現象の開拓や要素技術の進展が望まれる。