NISTEP注目科学技術 - 2022_E204

概要
次世代の分子標的治療薬(抗体医薬)として利用できる「立体構造特異的モノクローナル抗体」に注目している。その理由は、生体内の標的抗原はそれぞれ独自の2次構造、3次構造を有しており、その高次構造を特異的に認識する抗体は、治療薬として理に適っている。現在の抗体医薬の殆どすべては、生体内の標的抗原の1次構造を認識する特徴がある。その認識部位でも、ある一定の効果は期待できるが、高次構造認識抗体はその特異性および親和性において、従来の抗体医薬と比べて極めて高いことが予測され、格段の治療効果が期待できる。
キーワード
分子標的治療薬 / モノクローナル抗体 / 高次構造認識
ID 2022_E204
調査回 2022
注目/兆し 注目
所属機関 大学
専門分野 ライフサイエンス
専門度
実現時期 5年未満
分析データ 推定科研費審査区分(中区分) 47 (薬学)
分析データ クラスタ 5 (分子生物学/薬理学)
研究段階
「立体構造特異的モノクローナル抗体」の作製には、免疫動物の免疫系を利用したハイブリドーマテクノロジーが最も優れていると思われる。その目的のためには、3つのポイントが考えられる。
1.DNA免疫法などを用いて、立体構造を保持した状態で標的抗原を免疫動物内で発現させ、免疫系に認識させる必要がある。それによって、標的抗原によって感作された立体構造特異的抗体産生B細胞が活性化される。
2.感作された目的のB細胞の数が少ないため、標的抗原によって予め選択する必要がある。そのためには、立体構造を保持した標的抗原発現ミエローマ細胞の利用が考えられる。B細胞表面上の受容体(抗体)を利用した抗原抗体反応に基づき、目的の立体構造特異抗体産生B細胞を選択、濃縮することができる。
3. 最後に目的のB細胞-ミエローマ細胞複合体を電気パルスによって融合し、目的の立体構造特異的モノクローナル抗体産生ハイブリドーマを効率的に取得することができる。
上記技術はほぼ完成しており、すでに論文発表されている。コロナ対応も鑑み、早急な実用化が必要と考えられる。
インパクト
2022年調査にはこの項目はありません。
必要な要素
1.ヒト抗体産生トランスジェニックマウスを用いることができれば、抗体産生ハイブリドーマの作製と同時に高次構造特異的ヒトモノクローナル抗体を取得できる。
2.目的のB細胞とミエローマ細胞複合体を電気パルス融合するとき、B細胞-ミエローマ細胞複合体の配向を電極に対して垂直にコントロールできれば、より効率的に目的の高次構造特異的モノクローナル抗体産生ハイブリドーマを作製することができる。
3.標的抗原発現ミエローマ細胞を液体窒素ストックした後、標的抗原の発現効率が低下する場合がある。その点が改善できれば、さらに効率的な立体構造特異的モノクローナル抗体の作製が期待できる。
4.Gタンパク質共役受容体 (GPCR) などの膜結合型のタンパク質のみならず疾病関連可溶性タンパク質にも応用できれば、全ての種類(膜結合型および非膜結合型)のタンパク質への応用が可能になる。