NISTEP注目科学技術 - 2022_E196

概要
鉛蓄電池の過放電脆弱性が、正極集電体と正極活物質の局部電池反応によることが、最近理論的に明らかにされた。正極集電体にカーボン材料を用いることにより、過放電脆弱性が克服できる。詳しい解析により、正極活物質である二酸化鉛と正極集電体の鉛の間の局部電池反応が過放電脆弱性の原因であり、正極集電体をカーボン材料に変えることにより、この局部電池反応が阻止され、過放電脆弱性が解消されることが明らかにされている。さらに、正極集電体にカーボン材料を用いて、従来の鉛蓄電池では1回も可能ではなかった、2ボルトと0ボルトの間の深充放電の繰り返しが、1000回以上継続することも示されている。従来の鉛蓄電池が持つ、安価、安全性などの長所を維持しながら、リチウムイオン二次電池に相当する容量、深充放電サイクル寿命を実現できる。さらに、鉛蓄電池は、そのリサイクルがほぼ100%であり、完全に鉛が環境に出ないシステムが確立されている。SDG’sの観点からも、使用が推奨される。電気自動車のバッテリーとして、リチウムイオン二次電池に変わる可能性を持っている。また、太陽光発電のオフグリッド発電システムの蓄電にも大きな需要が見込まれる。
キーワード
過放電脆弱性を克服した鉛蓄電池 / リチウム電池に相当する深充放電サイクル寿命 / 電気自動車用バッテリー / リサイクルがほぼ1% / 安全性大 / 安価 / 太陽光発電のオフグリッド発電システムの蓄電
ID 2022_E196
調査回 2022
注目/兆し 注目
所属機関 大学
専門分野 ナノテクノロジー・材料
専門度
実現時期 5年未満
分析データ 推定科研費審査区分(中区分) 36 (無機材料化学、エネルギー関連化学)
分析データ クラスタ 11 (理化学/エネルギー・脱炭素)
研究段階
学術的研究段階をすでに終了し、実際の使用を目指す段階にある。
インパクト
2022年調査にはこの項目はありません。
必要な要素
鉛蓄電池が、すでに確立された技術で、技術進歩ポテンシャルが高くない(蓄電池戦略、経済産業省 蓄電池戦略プロジェクトチーム、(2012))というような固定観念があり、社会実装の障害になっている。機能を客観的に評価すると、電気自動車分野で、リチウムイオン二次電池に替り得るポテンシャルを持っていることがわかる。社会の固定観念の払しょくが、最も必要である。